正義の味方に愛された魔女2
ヒマちゃんラリちゃんの誘拐犯が二度目の来店をした、その次の日の閉店頃、沙耶ちゃんにチラッと話してみた。
気に病まないように話したつもりだったのに、
沙耶ちゃんは『自分のせいです、弁償します』と謝りながら泣いてしまった。
いや、いやいやいやいや………
泣かなくたっていいのよ。
弁償なんかしないでよ。
責任者の私が
指導不足を反省しなきゃならないの。
今回の損害は私の授業料ということ。
損害保険ってあるらしいよ?うん。
これからは、商品とお客様から目を離さないように気を付けてもらえば。
ということで、落ち込ませてしまって申し訳なかった。
次の日は沙耶ちゃんがお休みで、店に一人だった。
そう忙しくもない店なので、例によって営業時間内に商品を作っていた。
ショーケースの空間に陳列する予定のアメジストグラデーションのネックレスは、
3分の1ほど出来てきた。
幅広で存在感があり、なかなか目を引きそうだな…。
「アメちゃん、今度から、あそこの主役は貴女よ?
頼むねー」
沙耶ちゃんが聞いたらまた呆れられるけど、作った商品に名前をつけるのは、私の中では当然のことだった。
ニマニマと一人ごちていると、
カランカラ~ン。
ドアベルが鳴って若者が一人、入ってきた。
「いらっゃいま……あら、隼人。
連絡なしで来るなんて、何かあったの?」
「ただいま。近くまで来たから寄ってみた。
元気あり余ってそうで何よりだね」
よく来た、いらっしゃい、と肩を叩きながら彼を視た。
当然、こちらの心も丸視えだけど……。
日頃の気持ちや行動がお互いに全部視えるというのは、なかなか厄介だ。
私達親子は、
普通の親子ならあり得ない『衝撃の事実の暴露』でさえ、
余すこと無く瞬時に行われてしまう。
親子の間でも恋愛だのセックスだの、開けっ広げになってしまうということだ。
今ではもう、馴れてしまってオープン過ぎるくらいで、
他人が聞けば腰を抜かす会話が普通に繰り広げられる……。
《たまに来たら、母さんお盛んだねぇ。
あぁ、あんまり凝視してないから安心して?
そういう相思相愛って俺には経験でき無いかもなぁ…》
《あらら…隼人のそういう恋愛の仕方は、苦しいわ…》
体を触れあっていると、だいたい思っていることが通じてしまって、会話が要らない事が多い。
(このままでは、物語として成り立たないので、
いつもより言葉を多くして会話をさせることにします)
「新しく出来たショッピングモールでスイーツ買ってきた。
ここ見てるから冷蔵庫に入れといでよ」
「ぅわぉ!気が利くねー、ごちそうさま。後で一緒に食べよう!」
ちゃちゃっと入れて戻ってくると、隼人は作りかけのアメちゃんを見ていた。
「あそこの新顔?
じゃ、長いこと飾ってたあのバカ高いヤツ、売れたのか。
はぁーっ?ほとんど盗まれたってか!
…へぇ…。さすが荒川さん、頼りになるね。
………よかったね、母さん。
ここに越してきてもらえばいいのに。
部屋余ってるんだし。
籍、入れる気あるんだからさ。向こうもそう思ってるんでしょ?」
「あのさ、やっぱりそこはさ、ちゃんとプロポーズして欲しいっていうか、
私から言うのは何か嫌なのよ。
それに龍二は『再婚まで考えてるのは、まだ自分だけだ』と思ってるんだもん」
「『もん』ってアナタ、そういう所は乙女だねぇ。
羨ましいね、視る力を相手が知ってるっていうの…」
「あのね隼人、力の事を隠したままで、本当に信じ合える恋愛は出来ないよ?
母さんが結婚に失敗した原因がアレだから、
隼人はうち明けられないのかもしれないけどさぁ。
でも、龍二は最初から知ってたよ?」
「うん、そう。魔女様の言う通り。
息子の方は、そういう恋愛に縁遠い悪魔だよ。
荒川さんが器の大きい人なんだ。
普通は父さんの時みたいに、上手くいかなくなるんじゃない?
俺、高校の時に何度か告られてさ、
「恋愛とか興味ない」なんて言って断ってたの、母さん知ってただろ?
全部視えて、好きになれそうになくて断ってばっか……。
でも大学入ってから、初めはスイッチOFFにして付き合い始めてみたんだ。
でも、やっぱり視えたら幻滅するんだよ。
誰にでもある『自分の嫌な部分』なのにな。
それに今まで、相手から言ってきて始まった付き合いばっかりなんだ。
嫌な部分が視えるのに、自分から人を好きになんてなれない。付き合っても好きになったことがないんだよ。
ねぇ、俺って最低だろ?
みんな、俺の事こんな悪魔だって知らないで好きになってくれるんだ。
視えるから、なおさら後になって言えなくなるんだよ……。
うん、そう、ヘタレ」
「母さんは、最低男に育てたつもりはないんだけどなぁ。
表面の言葉や態度は嫌いじゃないけど、心の中が好きになれないって、
それは、本当は嫌いってことじゃない?
本当に好きな訳じゃないのにキスしたり体を重ねたりするのって、どうなの?
このまま、今そこに視える彼女と居ても苦しいでしょ。お互いにだね。
『嫉妬もしてくれないのは、そんなに好きじゃないからでしょ?』とか…。
バレバレなんだから妬くわけないよね。
うち明けないから解ってもらえないんだよ?」
「うち明けてもいいと思えないんだ。
女の子のこと、信じられないんだろうな、俺。
終わりにするために話す……だろうなぁ。
別れる為の嘘だと思われそうだけど。
俺、寛大じゃないんだよ。
彼女の勝手な所や、嘘や狡さや残酷さ…ある程度は誰にでもある気持ちなのに、好きになれない。信用できない。
天使みたいな子なんか居るわけ無いのにね」
「居るよ!母さん知ってるよそういう子。
隼人のまわりにそういう子が現れないだけだって。諦めるんじゃないよ!若いんだから」
「荒川さんの女版、居ないかな?」
「そんな子、居たら怖い。
マッチョな正義の味方の女の子?」
「いや、そうでなくて………!」
くだらない親子の会話が続いて閉店時間を迎える頃、
龍二がやって来た。
気に病まないように話したつもりだったのに、
沙耶ちゃんは『自分のせいです、弁償します』と謝りながら泣いてしまった。
いや、いやいやいやいや………
泣かなくたっていいのよ。
弁償なんかしないでよ。
責任者の私が
指導不足を反省しなきゃならないの。
今回の損害は私の授業料ということ。
損害保険ってあるらしいよ?うん。
これからは、商品とお客様から目を離さないように気を付けてもらえば。
ということで、落ち込ませてしまって申し訳なかった。
次の日は沙耶ちゃんがお休みで、店に一人だった。
そう忙しくもない店なので、例によって営業時間内に商品を作っていた。
ショーケースの空間に陳列する予定のアメジストグラデーションのネックレスは、
3分の1ほど出来てきた。
幅広で存在感があり、なかなか目を引きそうだな…。
「アメちゃん、今度から、あそこの主役は貴女よ?
頼むねー」
沙耶ちゃんが聞いたらまた呆れられるけど、作った商品に名前をつけるのは、私の中では当然のことだった。
ニマニマと一人ごちていると、
カランカラ~ン。
ドアベルが鳴って若者が一人、入ってきた。
「いらっゃいま……あら、隼人。
連絡なしで来るなんて、何かあったの?」
「ただいま。近くまで来たから寄ってみた。
元気あり余ってそうで何よりだね」
よく来た、いらっしゃい、と肩を叩きながら彼を視た。
当然、こちらの心も丸視えだけど……。
日頃の気持ちや行動がお互いに全部視えるというのは、なかなか厄介だ。
私達親子は、
普通の親子ならあり得ない『衝撃の事実の暴露』でさえ、
余すこと無く瞬時に行われてしまう。
親子の間でも恋愛だのセックスだの、開けっ広げになってしまうということだ。
今ではもう、馴れてしまってオープン過ぎるくらいで、
他人が聞けば腰を抜かす会話が普通に繰り広げられる……。
《たまに来たら、母さんお盛んだねぇ。
あぁ、あんまり凝視してないから安心して?
そういう相思相愛って俺には経験でき無いかもなぁ…》
《あらら…隼人のそういう恋愛の仕方は、苦しいわ…》
体を触れあっていると、だいたい思っていることが通じてしまって、会話が要らない事が多い。
(このままでは、物語として成り立たないので、
いつもより言葉を多くして会話をさせることにします)
「新しく出来たショッピングモールでスイーツ買ってきた。
ここ見てるから冷蔵庫に入れといでよ」
「ぅわぉ!気が利くねー、ごちそうさま。後で一緒に食べよう!」
ちゃちゃっと入れて戻ってくると、隼人は作りかけのアメちゃんを見ていた。
「あそこの新顔?
じゃ、長いこと飾ってたあのバカ高いヤツ、売れたのか。
はぁーっ?ほとんど盗まれたってか!
…へぇ…。さすが荒川さん、頼りになるね。
………よかったね、母さん。
ここに越してきてもらえばいいのに。
部屋余ってるんだし。
籍、入れる気あるんだからさ。向こうもそう思ってるんでしょ?」
「あのさ、やっぱりそこはさ、ちゃんとプロポーズして欲しいっていうか、
私から言うのは何か嫌なのよ。
それに龍二は『再婚まで考えてるのは、まだ自分だけだ』と思ってるんだもん」
「『もん』ってアナタ、そういう所は乙女だねぇ。
羨ましいね、視る力を相手が知ってるっていうの…」
「あのね隼人、力の事を隠したままで、本当に信じ合える恋愛は出来ないよ?
母さんが結婚に失敗した原因がアレだから、
隼人はうち明けられないのかもしれないけどさぁ。
でも、龍二は最初から知ってたよ?」
「うん、そう。魔女様の言う通り。
息子の方は、そういう恋愛に縁遠い悪魔だよ。
荒川さんが器の大きい人なんだ。
普通は父さんの時みたいに、上手くいかなくなるんじゃない?
俺、高校の時に何度か告られてさ、
「恋愛とか興味ない」なんて言って断ってたの、母さん知ってただろ?
全部視えて、好きになれそうになくて断ってばっか……。
でも大学入ってから、初めはスイッチOFFにして付き合い始めてみたんだ。
でも、やっぱり視えたら幻滅するんだよ。
誰にでもある『自分の嫌な部分』なのにな。
それに今まで、相手から言ってきて始まった付き合いばっかりなんだ。
嫌な部分が視えるのに、自分から人を好きになんてなれない。付き合っても好きになったことがないんだよ。
ねぇ、俺って最低だろ?
みんな、俺の事こんな悪魔だって知らないで好きになってくれるんだ。
視えるから、なおさら後になって言えなくなるんだよ……。
うん、そう、ヘタレ」
「母さんは、最低男に育てたつもりはないんだけどなぁ。
表面の言葉や態度は嫌いじゃないけど、心の中が好きになれないって、
それは、本当は嫌いってことじゃない?
本当に好きな訳じゃないのにキスしたり体を重ねたりするのって、どうなの?
このまま、今そこに視える彼女と居ても苦しいでしょ。お互いにだね。
『嫉妬もしてくれないのは、そんなに好きじゃないからでしょ?』とか…。
バレバレなんだから妬くわけないよね。
うち明けないから解ってもらえないんだよ?」
「うち明けてもいいと思えないんだ。
女の子のこと、信じられないんだろうな、俺。
終わりにするために話す……だろうなぁ。
別れる為の嘘だと思われそうだけど。
俺、寛大じゃないんだよ。
彼女の勝手な所や、嘘や狡さや残酷さ…ある程度は誰にでもある気持ちなのに、好きになれない。信用できない。
天使みたいな子なんか居るわけ無いのにね」
「居るよ!母さん知ってるよそういう子。
隼人のまわりにそういう子が現れないだけだって。諦めるんじゃないよ!若いんだから」
「荒川さんの女版、居ないかな?」
「そんな子、居たら怖い。
マッチョな正義の味方の女の子?」
「いや、そうでなくて………!」
くだらない親子の会話が続いて閉店時間を迎える頃、
龍二がやって来た。