正義の味方に愛された魔女2
「おー!隼人、元気か?彼女と仲良くしてるか?」


「龍二、そこ、触れないでやって?」


「ん?なんか、上手く行ってないのか?」


「いや、そんなことないよ。
荒川さん今晩は!適当に元気。
それより母さんの体がねぇ……年だからお手柔らかに。
甘やかさない程度に」

《その笑顔は怖いぞ隼人。
こっちにもあっちにもバレバレで参るよなぁ》


「あぁ……だけど百合は今まで甘えてこなかったから、
これくらいで丁度いいんだよ。な?」


あわゎ……隼人見てるんだから、そのすぐに抱き寄せる癖はダメだよぉ。


「はいはい、甘ったるいの御馳走様ー」



さっき冷蔵庫に入れたスイーツは、甘さ控えめフルーツゼリーで夕食の後のデザートに丁度良かった。

隼人が
「家族の晩餐、家庭の団らん、いぃねぇ!」とか言うものだから、
龍二がゼリーに、むせていた…。


『晩餐と団らん』が終わると隼人は龍二に何か耳打ちして帰って行った……。

そんなことしたって、あとですぐ視えるのに、わざとらしいったら………。




「隼人になにか言われて焦ってたね」


ポンッ……背中を軽く叩くと


「わっ……今触るなって、あーぁ…バレた。
いや、ちゃんと、こういうのは順を追ってな?
だめだな、百合にサプライズで何かする楽しみ、皆無だな……」

《『早く荒川百合にしてあげて?』だとぉー?
だから、焦らすなよ…。
まだそこまで考えてないだろうし。
百合は意外とロマンチストなんだから、その辺考えてカッコ良くだな、準備はしてると言うか……》


「龍二のペースでいーよー?」


「え?いいのか?そうか?
あ……どの辺の話だ?……あー全部か。
わかった、任せろ!」


若干、意味不明の龍二だった。






ヒマラリちゃん事件が解決した事を聞かされた。
スゴい速攻解決だ…。


やっぱりあの女の人の指紋が一致したらしく、
逮捕状もすぐ出て家宅捜索したら、家にヒマちゃん逹が拉致られてたそう…。

戻ってくるのか…。
あげてもいいんだけどな…って龍二に言うと、

刑期が終わって彼女がもし謝りに来たら、その時に改めて考えな、と諭されてしまった…。

彼女は今回、初犯だったけど、万引きというのは癖になる人もいるらしい。
もし、そうやって来てくれたら、『二度としない』と約束してもらって渡そうと思う。

甘いだろうか…。




その日、泊まっていってくれた龍二は、
次の朝出掛ける間際になって、私に告げた。


「荷づくり、始めたんだ。視えてたろ?
百合、俺ここに引っ越してくるから。
仕事で帰ってこれない日もあるけど、
帰る場所、ここにしたいんだ。
いつでも歓迎してくれるよな?」


「うん……うん。視えてたよ。でも言ってくれて嬉しいよ。
『おかえりなさい』『いってらっしゃい』って言えるんだね。
いつでも、大歓迎だよ」


送り出すときのキスが、いつもの何倍も優しくて長い気がした………。


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