正義の味方に愛された魔女2
「でも、何か起きたら全部自分で何とかしなきゃだから、結構大変だよね?」


「そうだな……面倒ごと、嫌いだ」


「まぁね、好きな人はあまり居ないよね」


「……ねぇ、内田さんの息子、仕事何やってんの?」


「SE。システムエンジニアっていうやつ。
でも、何をどうやってるのか仕事内容は何も知らないの。
私、パソコンはメールとネットしか出来ないもの」


「ふぅん……20代後半でSEか。給料よさそう」


「普通じゃないかなぁ。生活は出来てるみたいだよ?
信也くんは前に広告代理店で営業してたんだよね?」


「そう…成績悪いダメ社員だから辞めさせられた。
営業なんか向いてなかったんだ。
本当は高校出たら美容学校行って美容師になりたかった。
中学の頃からボンヤリ思ってたけど…。
そんなの親父がいいって言うわけない」


「それ、ご両親に相談した?」


「いや。あの人達、典型的な学歴至上主義だから。進路相談の時点で諦めてたよ」


うそぉ!何てこと!!


「なら、前の会社辞めた時は?
その時はもう、美容学校行きたくなかった?」


「……気持ちはあったけど24じゃもう遅かったし……もうどうでもいい。
親父に見捨てられてるから」

《父さんはエリートですごいんだ。でも俺はデキソコナイ…》


「遅い…のかなぁ…。
お父さんは今まで厳しかったの?」


「高校と大学は決められた。
高校はなんとか受かったけど大学は一回落ちた。
予備校行ってランク下げて…成績落ちると怒られた。
その時ちょうど彼女いてさ、成績落ちたから別れろって。ひどいだろ?」


雅也ぁ……何やってんのさ、ほんと。


「それで、別れてますます成績落ちた、と。
彼女に暴言を吐かれた、と。
親のいいなり!って」


「そう、よくわかるね。
親父に逆らっても無駄だから…本当のこと言われただけだし。
もっと他にも言われたよ。
マザコンとか、ファザコンとかさ」


……言わないでおいてあげたのに、自虐的だねぇ。


「なんだか、さっきのお母さんの話の時と同じだねぇ。
自分のことを本当に解ってもらう為には、自分の本当の気持ちを言わないと」


「言えなかった」

《親の言いなりは嫌だけど…それが正しいって言われたら仕方ない》

《自分の心、晒すのが怖いっていうか、人に気持ちを知られたくない》


何これ!
別れた時の雅也の気持ちとそっくりだ。


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