正義の味方に愛された魔女2
その日、沙耶ちゃんが出勤してきて間もなく、
婚約指輪に気が付いた彼女の歓喜の悲鳴が、店じゅうに響き渡ったのだった……。





閉店後間もなく、隼人が満面の笑みを浮かべてやって来た。
小さくなって謝りに来た騒動前のあの日とは、まるで別人の明るさだ。


「荒川さん……いや、龍二さん、母さん、婚約おめでとう。それと、もう秒読みの結婚おめでとう。
母さん、やっと荒川さんになれるねぇ。もう、二人ともそれぞれ丸視えだからさ、ヤキモキしてたんだよ俺。
いやー良かった良かった……」


「ぶふっ!
隼人ぉ、自分が結婚するみたいな喜びようだねぇ。ありがとうね」


「ねぇ、式もお披露目も何もしないのはなんとなく解るけど、写真くらい撮れば良いのに」


「だって……二回目だし、いくつだと思ってんの?あぁいうのって、似合う歳の内に撮らないと……。
龍二も、初婚だけどそういうのはいいやって、思ってるんだもんね?」


「写真くらい、とってもいいんだぞ?百合なら綺麗に撮ってもらえるさ」


「俺さ、これ書いたら帰るから、夜間窓口に出して、さっさと入籍しちゃいなよ」


「え?晩御飯出来てるし食べて行けばいいのに……隼人、ちょっとこっちおいでー」


あーなるほど……へー。


「そう。龍二さん見習って鍛えて発散させないとさ。
色々やってみると自分が好きな、自分に合う鍛え方がわかって来るって……ね、そうだよね。
じゃあねー。またすぐ顔見せに来るから」


龍二に同意を求めたと言うことは、アドバイスを参考にしてるんだ。


「……隼人が筋肉隆々になったら……なんかおかしいよ?
わりと女顔の癖に身長がそこそこでヒョロッとしてる。
そこに筋肉?うーん、違和感」


「まぁ、いいだろ、適度に鍛えて悪いことは無いんだ。
……じゃ、お言葉に甘えて晩めし食ったら提出してくるか……な?」







婚姻届っていうのは、24時間365日、いつでも提出できるようになってるんだね、死亡届も確かそう。
(地域、出張所によっては出来ない所もあるらしい……けど)


そこだけ明るく照明が灯る窓口で、笑顔で受理してもらって、
晴れて、私と龍二は夫婦になりました。
感無量です。またまた泣きそうです。


「荒川百合さん、泣くのは帰ってからにしてください……。
……ほら、我慢だ。コンビニでアイス買ってあげるから泣くなよ?」


「やー、ムードぶち壊すの上手くてとっても素敵だわー」




帰り道に、龍二がポツリと言った。


「写真だけ……撮らないか?
ウェディングドレス着た百合、まだまだイケると思うんだけどな、俺。綺麗だろうなぁってさ。見たいな…」


「うぇーっ、50歳の花嫁ぇ?恥ずかしくない?」


「いや、俺と百合の記念だろ?人にあげるもんじゃない。
なぁ、俺も恥ずかしいんだけど…。撮ろう?」


「………うん、わかったよ。恥ずかしいからあまり人に見せないでね?」


と言うことで、衣装を借りて写真を撮ることになってしまった。



そのあと本当にコンビニでアイスを買うのを忘れない二人だった……。







< 47 / 50 >

この作品をシェア

pagetop