甘いささやきは社長室で



意識をしてしまうのはしょうがない。だけど、仕事は仕事。私の務めは、桐生社長の秘書。

そこだけは、忘れてはいけないから。





それから慌ただしく仕事を終え、一泊分の簡単な支度をして……とバタバタするうちに迎えた翌日。

私と桐生社長の姿は仙台へ向かう新幹線の中にあった。



「……」



通路側の座席に座りちら、と見れば、すぐ隣の窓際席に座る桐生社長はいたって普通の顔でタブレットをいじっている。

よりによって、なんで隣同士にしちゃったんだか……いや、混んでるから仕方ないんだけどさ。



本当は前後に分かれて座りたかったけれど、予約が少し出遅れたこともあり席はいっぱいで、その証拠に、乗客の多い車内はほとんど埋まってしまっている。

だから仕方ない、そう思うものの、普段隣に座ることなんてないものだから嫌でも意識してしまうもので……。

微かに触れる肩が、少しくすぐったい。



……まぁ、本人は気にしてないんだろうけどさ。



その手元を見れば、呑気にテトリスをしている彼から意識などは感じ取れない。

すると、桐生社長はタブレットへ目を向けたまま口を開く。


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