甘いささやきは社長室で
「ありがとうございました〜」
店員の明るい声に見送られ、食事を終えた私と桐生社長はふたり店を後にした。
あとはホテルを目指すだけ……のはず、が。
一方で私は道の端でうずくまり、その隣には呆れた顔の桐生社長の姿がある。
「うぅ……気持ち悪い……」
彼への意識やドキドキをごまかすように飲み続けたカクテル。
けれど、ジュースのような味だからとあなどっていたらこの通り、店を出る頃には私は気持ち悪さに歩けずうずくまってしまっていた。
「ほら、言わんこっちゃない。甘いからってあれだけ飲めば酔っ払うに決まってるでしょ」
「悪かったですね!お酒の飲み方も知らないで……うっ」
「はいはい、興奮しない。落ち着いて落ち着いて」
呆れたように笑われたことが悔しくて反論するものの、込み上げてくる吐き気に下を向くと、彼は私の背中をよしよしとさすった。
うう、情けない……。
こんな風に動けなくなるまで飲むなんて、いつもならしないのに。気を紛らせるためとはいえ、不覚だ。
彼の前ではやっぱり、いつも自分のペースが乱れてしまう。
仕事も食事も終えたことだし、ここはもう、少しひとりで休もう。