甘いささやきは社長室で



「私ばっかり、乱されてる」



静かな部屋に響いたひと言。その言葉に桐生社長は少し黙って下を向く。



「……なんでそんな、かわいいこと言っちゃうかな」

「え……?」



ぼそ、とつぶやかれた声に、覗き込むようにして見れば、その頬はほんのりと赤い。

なん、で……?



「桐生社長?また熱ですか?」



突然のその頬の色に、少し驚いて彼の頬に手を添える。

熱い、そう感じた瞬間桐生社長はその手を掴むと押し倒すように私をベッドに押し付けた。



部屋の小さな明かりがほんのりと逆光して、不思議な色気を漂わせる。



「マユちゃんさ、分かってる?ベッドの上で男にそんなこと言ったらなにされるか分からないよ?……ましてや、僕みたいな無理矢理キスするような男相手になんて」



ふっと笑うように言うけれど、私を見つめる瞳はいたって真剣なもの。



……そうだ、彼はそういう人だ。

出会ってすぐ無理矢理キスをするような人で、へらへらと笑ってばかりいる。そんな人。



だけど、それでも今こうして彼とふたりでいられるのは、知っているから。



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