甘いささやきは社長室で






彼に対して好意を抱いていると自覚した途端、よりいっそう浮かぶ疑問は、彼の本心。



桐生社長はどうして私にキスをしたり、抱きしめたりするんだろう。

『好き』と言われたわけではない。

どうしたいか言われたわけでもない。



……ということは、やっぱりからかい?

彼なりのスキンシップでしかなくて、それをいちいち本気で受け止めるなんて、バカな女だと思われる?

それはそれで、いやだ。



冗談なのか、本気なのか、その心がなにひとつわからない。

どうしていいかも、わからない。





ピリリリ、と突然鳴った音に、はっとする。

我に返りデスクを見れば、そこはいつも通り自分ひとりの秘書室で、目の前のデスクに置かれた仕事用のスマートフォンが音を立て着信を知らせていた。



……ボーッと、してた。

いけないいけない、仕事中なんだからしっかりしなくちゃ。


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