甘いささやきは社長室で
「そうだったんですね。実は桐生社長、今は来客中でして……上の応接室でお待ちしていただいてもよろしいですか?」
「いいんですか?すみません、ありがとうございます」
ぱあっと表情を明るくする、その顔は正直、同性からみてもかわいい。
見た目も中身もかわいくて品があるなんて……さすが、ボヌール・竜宮の娘だ。そりゃあ桐生社長も、親の決めた婚約とはいえ了承してしまうわけだろう。
花音さんを連れエントランスからエレベーターに乗り、社長室のある12階へやってきた私は、一番手前の応接室へ彼女を通す。
そして隣の給湯室で手早くコーヒーを淹れると、応接室で待つ花音さんの前にカップを置いた。
「コーヒーでよろしかったでしょうか?」
「はい、ありがとうございます。いただきます」
笑ってうなずくと、そのまま彼女の視線はじっと私へ向けられる。