甘いささやきは社長室で



「くだらないこと言ってないで仕事してください」



そしてトレーを手に、スタスタと部屋を出て行ってしまった。

いつも以上にそっけないその言い方は、呆れているのか、面倒だと感じているのか。どちらにせよ、穏やかではない感情を含んでいることは明らかだ。



……意地悪しすぎたかも。

でもさ、やっぱり僕からすると元カレが社長として登場とか、彼女と仲よさげだとか、いい気はしないわけで。

ついつい意地悪なことを言って、彼女の愛情を計ろうとしてしまう。



そこでマユちゃんが、『そんなことない、私にはあなただけ!』なんて言うタイプじゃないって言うのはわかってるんだけどさ……。

いい歳して、まだまだ子供な自分が憎い。



ひとり残された社長室で、僕は先ほど受け取った招待状を改めて見る。

日付は一週間後……ふたりで、か。

気は進まないけど、マユちゃんのドレス姿だけは楽しみだなぁ、なんて。頭の中をまた彼女でいっぱいにした。





< 194 / 215 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop