甘いささやきは社長室で
……分かってるというのは口先だけで、絶対納得していないのだろう。
こんな明らかに不機嫌さを見せるなんて、なんだか付き合ってから子供っぽくなった気がする。
そんな一面を見せられるくらい、気を許してくれているということなのだと思う。
それはそれで嬉しい気がしなくもないけれど……私は一体どうすればいいのやら。
「……はぁ。桐生社長、いい加減機嫌直しませんか」
「別に。機嫌悪くないし。普通だし」
「その言い方がすでに不機嫌ですよ」
ズバリと突く私の言葉に、彼は『うっ』と図星を突かれ、少しバツの悪そうな顔をする。
そしてなにかを考えるように複雑な表情を見せて、観念したように口を開いた。
「……知ってる?経理部の高木くん、絵理に気があるらしいよ」
「へ?」
「それに営業部の湯川くんも絵理のこといいなって言ってたらしいし、君島くんは向井さんに『合コンに真弓さんを誘って』って頼んでるんだって」
え?経理部の人に、営業部の人……気がある?合コン?
ひとりひとり顔を思い出そうと思えばうっすら浮かんではくるけれど、初めて耳にするその話に意味がわからず首を傾げた。
そんな私に、彼は私がいる方向とは反対の左側に顔を背けたまま、深いため息をひとつついた。