甘いささやきは社長室で
「チャラチャラしてるようで真面目で、ヘラヘラしてるようで時々寂しそうでもあって……そんな顔を見せたと思ったら、また隠して、分かりづらいです」
知れば知るほど、よく分からない人。
一瞬見せた顔をすぐ隠して、笑ってみせて、どこまで考えているのか、どこまで自然なのか分からない。
なのに、秘めたその表情をもっと知りたいと思う自分もいる。
そんな私の心の内を読むかのように、三木さんはふっと笑って頷いた。
「そうですね。隠すのだけは上手い人ですから。でも真弓さんの見てる桐生社長が、本当の桐生社長だと思いますよ」
私が見てる、桐生社長が……?
その言葉の意味は、分かるような分からないような……複雑な気持ちでフォークを持つと、私もパスタを巻き取り口へ運ぶ。
「マイペースな人ですからね。時々本気で呆れちゃいますけど、やることひとつひとつにもちゃんと意味があるんですよ」
「意味?」
「えぇ。例えば秘書を女性にするのだって……あ」
言いかけたところで三木さんは『しまった』というように右手で口を押さえて黙る。
「秘書を女性にするのだって、なんですか?」
「えっ、あっいえ!なんでもないです!やっぱり今の忘れてください!」
……そんな明らかに隠すような言い方をされては、こちらも気になってしまう。
口をつぐんだ三木さんに、私は強く問いただすことはせずとも、愛想のない顔のままじーっとその顔を見続ける。
無言の圧力を感じたのか、その顔には次第に汗がにじみ、やがて折れたように「はぁ」と息をひとつ吐き出した。