甘いささやきは社長室で



「……桐生社長からは『周りには絶対言わないように』って言われてたので、内緒にしてほしいんですけど」



そして声をひそめるように、私に顔を近づけて小声で言葉を続ける。



「桐生社長が女性秘書にこだわってたのも、女性主体の会社だってことを象徴するためなんですよね」

「え?そうなんですか?」

「えぇ。うちの会社って女性社員多いじゃないですか。産休育休、その後のケアの充実はもちろん人事の面でも男女平等に評価してるんです」



言われてみれば……。

他の会社と比べて、事務はもちろん、営業部や広報部、どの部署も女性が多い。それに主任や課長など上の立場の女性も多いし、出産後の復職率も高い。

以前先輩が『子供がいてもいろいろ融通利かせてくれるから助かる』と話していたことを思い出した。



「けど……どうして、ですか」

「『女性の知識と情報なしでは食品業界は把握できない。そのためには少しでも女性の過ごしやすい会社になるべきだ』、というのが桐生社長のモットーらしいですよ。いつの時代も、トレンドを作るのも追うのも女性。家族や子供のために食品を気にかけるのも女性、ですから」



小声で言って笑う三木さんに、なるほどと納得してしまう。


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