無垢なメイドはクールな彼に溺愛される

 辿っていた記憶の中に浸り、ボンヤリとしていると、

 ピンポーン

 目を覚まさせるようなインターフォンが鳴った。



 ポケットから子機を取り出して「はい」とインターフォンに答えると、
 低い声が「花菱百貨店の外商大石さんです」と答える。


 頼もしく響くその低音は、正面玄関を守る崎田の声だ。



 すぐに青木夫人に来客を伝え、玄関に駆け付けると



「いらっしゃいませ」

「こんにちは」


 爽やかな笑みを浮かべた花菱百貨店の外商担当者の大石が顔を覗かせた。



「どうぞ、奥さまがお待ちです」

 いつものように案内しようとするユキに「あの」と声をかけ、大石は紙袋を差し出した。

「ちょっとプライベートで旅行に行ってきまして
 よろしかったらどうぞ召し上がってください」


 さすがやり手のデパートマン。
 旅行先から買ってくるチョコレートも現地でなければ手に入らないヨーロッパの某有名店のものだ。
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