無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
「ありがとうございます」

 ニッコリと笑顔で受け取り、また歩き出そうとすると、
「あの」と再び呼び止められた。

「はい…… なにか?」

 大石は名刺を差し出した。
「ユキさんに、きちんと挨拶をしたことがありませんでしたよね」

「――あ……はぁ」

「あの、ユキさん
 これはユキさんに」

 大石は名刺だけでなく、小さな紙バッグを手渡した。

「……?」

 これだから油断ならない。
 ユキは心の中でため息をついた。


 使用人だろうがなんだろうが、利用できそうな者は利用しして青木家に取り入ろうとする不届きな奴は後を絶たない。


 つい最近も、頼んだ物を間違って持ってきた調子のいい酒屋に媚びられたばかりである。


 それでもこの大石の事は真面目で誠実な人だと常々信用していたので、ユキは怪訝そうに眉をひそめながらストレートに聞いてみた。



「何か失敗でもしちゃいました?」

 事情によっては、言い訳を聞いてあげてもいいと思った。
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