瑠璃色の姫君




う、わ……時間が止まったみたい。



「もしかしたら」



その時間を動かし始めたのは、フリュイの優しげな声だった。



「もしかしたら、“バベル様と結婚しなさい、お前が次期シュトラント王妃になれば我が家は安泰だ” とか何とか貴女様の親御様から言われたんじゃないですか?」



フリュイがロゼアを覗き込んで優しく微笑みながらそう言った。


ロゼアは、それにゆっくりと頷いた。


その時、瞳から一筋の涙をこぼれ落ちる。


それを拭ったフリュイの手をロゼアが掴んだ。



「フリュイさんと言ったかしら」


「はい」


「少し2人でお話しませんこと?」


「……はい、喜んで」



フリュイがロゼアの手を取って、歩き出す。


遠くには行かないから待ってて、とフリュイに言われて、僕は少し浮かした腰を下ろした。



なんだか、フリュイにはいつも驚かされる。


今だって、泣いてるところを見せたことのないプライドの高いロゼアの心の内を引き出した。


すごくぐっとくる言葉を言っていたのも、驚いた。



“気づいたら始まってるもんなんだよ!”


そうだね、よくわかるよ。


会って間もなかったのに、気づいた時にはもうレティシアに夢中になっていた自分がいたから。


凄いなぁ。


恋は、気づいたらもう落ちてるものなんだね。



ふいに、空を仰ぐ。


雲ひとつない真っさらな空をルディが飛んでいる。


いつの間に飛び上がったのだろう。



その光景がすごく綺麗で、レティシアに見せたくなった。


それと同時に、会いたくて会いたくて、たまらなくなった。




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