瑠璃色の姫君
存分に時間を使って僕に言われたことを考えて、ジルは僕に礼を言ってきた。
「アドバイスありがとうございます」
「いや。偉そうになった、ごめん」
「いえ、ためになりました」
その顔は、さっきのようなうじうじした顔じゃない。
ポーカーフェイスはあまり崩れていないけれどわかる。
吹っ切れたようなさっぱりした顔だ。
「私の一番は、どれだけ考えてもロゼア様でした」
「なら頑張れ。手にできるといいね」
「はい」
ジルが頷いたところで、ちょうどよくフリュイとロゼアが戻ってきた。
「見て見て、バーベルぅー!」
フリュイがニコニコしながら僕に寄ってくる。
「何?」
「ロゼアに貰ったの!」
頭の上に乗っかる花冠を指差して、フリュイが嬉しそうに笑う。
その笑顔につられて僕も笑いながら、心の中では先ほどジルに言ったことを自分に言い聞かせていた。
僕の中の一番を優先する。
それは無論、レティシアを意味する。
言うまでもなく、彼女だ。
さっきまでは、僅差だったかもしれないがレティシアが一番だとはっきり言えていたのに。
……だけど、僕にはもう一つ大切なものが出来てしまった。
この数分フリュイと離れたのが苦痛だったことに気が付いたのだ。
あんなに衝突していたのに話し合ったことで仲良くなったのか、ロゼアとフリュイは楽しそうに笑い合っている。
その花冠の少年を見た僕は、寂しげな笑みをもらした。
やっぱり、離れたくない。
一度は決めたフリュイとの旅の終わりを遠ざけたくなっていた。
ああ、困った。
一番が、決めきれなくなったのだ。