チェロ弾きの上司。

ほんとに来た。
うちのキッチンでうどん作ってる。
高いお洋服を汚したら大変なので、あたしのエプロンをお貸しした。サイズが小さくて、気休め程度にしかなってないけど……。


電話があった後、歯を磨いて顔を洗って着替えて。
部屋を軽く片付けて、換気して。
とはいえ、風邪をうつしたら大変なので玄関先で帰っていただこうとしたら、「ここで騒いだら近所迷惑だろ」とか言われて部屋に上がりこまれ、
……今に至る。


夢かな、これ?
あたしはローテーブルから真木さんに声をかけてみる。

「お料理、されるんですね」

「一人暮らし長いからな。外でまずいもの食うなら、いい食材買ってきて簡単なもの作る」

返事が返ってきたので夢ではないらしい。

“いい食材”がどんなものかは、あえてきかないでおこう……。


「おい、丼ひとつしかないのか」

「はい。ふたつも必要ありませんので。丼は真木さん使ってください。あたしは……」
言いながら立ち上がり、キッチンに向かおうとすると、
「いい。座っとけ」と言われた……。

「四角くて白い深めの器があると思うので、あたしはそれで構いません」

「ふーん」

「何ですか?」

「いや。何でもない」

何だかうれしそうだけど、なぜ?
真木さんの考えることは、よくわからない。


細めのうどんで、明太かき玉うどん。
赤、ピンク、黄色、小ネギの緑……美しい。
センスがいいサイトを作る人は、料理の盛り付けのセンスもいいんだなぁ。

「いただきます」

わ、美味しい!
とろみがついてるから、あったまる!

「美味しいです」

「そりゃどうも」
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