チェロ弾きの上司。
「前職は、印刷会社だったな」
「はい。大手の子会社の支社で、スーパーのチラシとか販促物作ってました」
「きつかったのか」
「……そうですね、人員が少なかったので、遅くまで働いてました。でも、やりがいはありましたよ」
「オケは?」
「途中まではワガママ言ってセカンドで弾かせてもらってましたけど……一時はお休みさせてもらってました」
「どうして会社辞めたんだ?」
「……仕事、ずっと回し続けなきゃいけないのに、あたしの調子には波があって……。でもそんなこと会社やクライアントさんには関係ないですから、無理し続けてたら、身体が悲鳴あげちゃって……」
「……そうか」
珍しく優しい相槌を打つものだから、言葉が止まらなくなる。
「何で女に産まれちゃったんだろう、って、何度も思いました。女じゃなくて男に産まれたかったって。そうすれば、……」
あれ。あれれ。
涙、こぼれてきた。
「ごめんなさい、ちょっと……」
あたしは慌てて立ち上がり、キッチンに向かう。
後ろから真木さんがついてきた。
「見ないでください……」
「いいよ。泣けよ」
「ダメです。上司の前で泣くなんて、部下としてしちゃいけないことです」
「……じゃあ……
今は、上司と部下じゃなくて……」
真木さんは言い淀んで。