チェロ弾きの上司。
真木さんの顔はあたしの頭の上にあるから表情は見えないけど。
どんな顔でこんなこと、してるんですか?

どうして、優しくしてくれるんですか?

……怖くてきけない。

「どうして、とかきくなよ。オレにもよくわからないんだから」

あたしの思考を読んだように、真木さんが言った。

オレ様な口調と言ってる内容がアンバランスなのがおかしくて、ちょっと笑っちゃった。


「この間は……悪かった。オレは、どうもおまえを前にすると、おかしくなる時がある」

……あたしもです。
とは、言えなかった。


「……あたし、やっぱり、男ならよかったです。そうすれば、真木さんと一緒にお仕事できたのに……」


真木さんは、
何も言わず、
ゆっくりと、何度も、
あたしの頭をなでてくれた。


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