チェロ弾きの上司。

あたしも野次馬根性で、覗きに行った。
廊下は既に黒山の人だかり。
部屋の中からはゆっくりとしたスケールが聞こえてきてる。

部屋には、団長と、コンマスの三神さんと、チェロのパートリーダー。
肝心の新団員は見えない。
チェロは座って弾くからなぁ。

スケールの音がやみ、
少しして聞こえてきたのは、
バッハの無伴奏チェロ組曲第一番、前奏曲!
チェロのソロ曲といえば、これ!みたいなド定番の曲。

ひゃー、上手い。
そんじょそこらで、ちょっと弾いてました、のレベルじゃない。
ちゃんと先生について、習っていた人の上手さだ。

そして……、

……優しい。

少しゆったりめのテンポで、丁寧に、繊細に、音が紡がれていく。

この曲が、チェロが、音楽が、好きなんだなぁ、って伝わってくる。

チェロってこんないい音するんだ……。

素敵だなぁ……。



終わると、ギャラリーからため息がもれ、拍手が起きた。
みんな聴き入ってたもんね。

「すげぇ……」
「うまい……」
「コンマスの大学時代の同期だって」
「ってか、かっこいい……!」
「眼福……」

ふぅん。まだ若くてかっこいいんだ。

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