チェロ弾きの上司。
「弦、よくはなってきてますけど、まだ軽いんですよね」
はい。前々からの課題となっている箇所です。
ここ、ボウイング(弓づかい)は、四分音符4つ連続ダウン(下げ弓)。
ダウンで弾く→弓を弦から離す→元弓に戻す→ダウンで弾く。
の繰り返し。
問題は速度指示。
二分音符=120(1分間に二分音符を120入れる速さ)。
ということは四分音符=240。
つまり、一秒間に四分音符4つ。
すなわち、0.25秒で、弓を弾いて離して戻すということになる。
物理的に不可能じゃん!
何とか弾こうとすると、早く弓を弦から離して元弓に戻そうとするものだから、音が軽くなってしまうのよ。
本来の連続ダウンの目的である、重い音が出せない。
「もう少し重い音で行きたいですね」
若い男性指揮者が弦楽器を見回しながら言い、最後にコンマスの三神さんを見た。
三神さんが立ち上がり、みんなの方を向いて楽器を構える。
わ。来る来る、お手本!
あたしはガン見する。
「弓に腕の重さを乗せて、弦に引っ掛けてしっかり鳴らす。そうすれば弓は離れても響きは残ります。
弓を戻す動きですが、弓で弦に対し垂直に円を描くイメージです。無理に離したり早く戻そうとする必要はありません」
ゆっくり弾いて見せてくれる。
はー、やっぱ上手い。
「速くするには、円を小さくしていく」
言いながら、だんだん速くしていく。
……はい。物理的に可能であるということが証明されました。