チェロ弾きの上司。


「望月、指示した資料はまだか!」

真木さんが窓を背にしたデスクに座ったまま、叫んでくる。

「すみません、あと10分お待ちください」

「あと5分!」

このぉー。
真木さんはやっぱり会社じゃ優しくない!
昨日チェロを弾く姿を美しいなんて見とれてた自分がバカみたい!

真木さんは1カ月たって会社に慣れてきたせいか、ますます仕事のスピードは上がり、あたしにも容赦なく仕事を振りはじめた。

こっちは合間に電話応対しながら資料作ってるっていうのに!

あ、また電話が鳴った。
誰か……誰も出ないよね。

気持ちを切り替え、受話器をとる。




「真木さん、お待たせしました、共有フォルダにデータ入れました」

「8分。まあまあだな」

……はぁ。よかった。
今日の仕事、ひと山越えた。

あー、頭痛いなぁ。
腰も痛いし。
こりゃそろそろ来るな。
カレンダーを見てため息をついた時だった。
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