不器用ハートにドクターのメス
誰かの前で自分の趣味のものを買うという行為は、真由美にとっては、ひどく気恥ずかしいことだったのだ。
ピンクのクマから視線を外すと、真由美はその行き先を、神崎へと向かわせる。
神崎は、大変難しそうな顔をしながら、一体の黒いクマを手に取って眺めていた。
神崎とクマ。そのいびつな組み合わせは、良い意味でのギャップを引き起こしており、真由美の心を動かした。
それは、ときめきに似た感情だったかもしれない。
そして、そのときめきをぐんと越えて、真由美の心臓をきゅっとしぼったのは、直後の出来事だった。
「なんか、欲しいもんないか」
神崎が突然、真由美のいる方を振り返り、そう尋ねてきたのだ。
くちびるを一文字に結んだまま、直立不動で目を見開く真由美に、神崎が言葉を連ねる。
「せっかくだから、どれか買ってやる」
「……え」
その言葉の意味をゆっくりと頭でかみ砕いてから、真由美は勢いよく、首を横に振った。
「〜い……っ、いえいえいえっ!!そんなっ、め……めっそうもない……!!」
「いいから選べよ。十秒待つ」
「じゅう……!?」
混乱の最中、極端に短い制限をもうけられてしまった。
真由美は理解できないまま、とりあえず選ばねばという義務にかられ、焦って辺りを見回す。
「えっと……えっと、どうしよう?えっと……」
「うそだよ」
右に左に、首を回して目につくものを探していると、ふっと軽い笑い声とともに、そんな言葉が聞こえてきた。
「……ゆっくり、選んでいい」
「……っ、」