不器用ハートにドクターのメス

低い声と落ち着いた眼差しが、真由美の心臓をしめつける。

オペで見せる険しさを、ずっと遠くにやったような柔らかい表情は、真由美の中にあるときめきを倍増させた。


お言葉に甘えてさんざん悩んだ末、真由美は結局、小さなクマのぬいぐるみがついたストラップを買ってもらうことにした。

先ほど目に留めていた、ピンクのものだ。


「ありがとうございます、大切にします……!!」


店の外に出たところで、珍しく大きな声を張り上げてしまった真由美に、神崎は笑いながら「おー」と返事をする。

会計の際、店員に「お付けになりますか?」と尋ねられて頷いたため、真由美のカバンには、さっそくストラップがぶら下がっていた。

一歩、二歩と歩くたびに、ピンク色のクマが踊るように揺れる。

まるで一緒に歩いているみたいだと、真由美は自分の顔がにやけてしまうのを感じ、慌てて口元を右手でおおった。

実際、真由美のにやけ顔は女子の可愛らしいものではなく、とんでもない殺人方法でも思いついたかのような凶悪な表情であったため、隠して正解だったのだが。

手の内側でなんとかくちびるを通常の形に戻しながら、前を行く神崎の背中を追いかける。

雑貨店の後に行く場所も決まっているらしく、神崎の足取りには、やはり迷いがなかった。

けれど歩幅は、病院の廊下を歩く時のように広くはなく、真由美でも容易に追いつけるスピードに調整されている。

そんな神崎は、先ほどからずっと、道行く女性の視線をさらい続けていた。

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