不器用ハートにドクターのメス
決して悪目立ちするような恰好でないにも関わらず、視線を集めてしまうのは、神崎が、抜群のスタイルと顔立ちの持ち主であるがゆえだろう。
仕事で白衣、もしくはオペ着をまとっている際にはどうしても威圧感が前に出るのだが、私服である今、神崎には若干声をかけやすそうな、ラフな魅力が備わっていた。
道行く女性が振り返る、なんてことが実際にあるんだなぁ……。
そんな風に、真由美は感心してしまう。
そして、神崎が人目を引く男前であるということを改めて実感してしまうと、後ろめたいような気持ちが込み上げてくるのも、また事実だった。
こうして自分なんかと歩いていると、先生の趣味が疑われやしないだろうか。
そんな心配が、むくむくと、頭の中で育っていってしまう。
猫背になりながら、真由美は表情を淀ませる。
先生と連れ立って歩くのにふさわしいのは、ランウェイを闊歩できるような美貌を持った女性で、少なくとも人相がすこぶる悪い自分ではないと思うと、なんともいたたまれない。
真由美は普段、一人で行動している時には、他人から視線をそらされることが多い。
しかし今日は、神崎の影響で真由美にも存分に視線が集まっているため、その視線の多さにも、精神はすり減っていってしまうのだった。
そんなわけですっかり気分が落ち込んでいた真由美だったが……神崎について百貨店のビルに入り、エレベーターで9階に上ったところで、その塞いだ感情は、一気に晴れ渡ることとなった。