不器用ハートにドクターのメス

「わあ……!!」


開かれたエレベーターの扉の向こうに見えた光景に、思わず、歓声をこぼしていた。

百貨店の9階は催し物会場で、そこで開催されていたのはなんと、真由美の大好きな、クマーヌのイベントだったのだ。

"クマーヌ・キャラクター展示会"と大きな看板が掲げられており、受付と思われるところに、両手を広げたクマーヌのパネルが置かれてある。


「な、なんで……っ、せんせ……」

「いいから、とりあえず降りろ」


神崎は苦笑い気味にそう言って、きょろきょろとニワトリのように首を動かす真由美の肩を、トンと押した。

降り立ったフロア。そこは見事に、ほぼ、と表現して違わない割合で、女性ばかりが溢れていた。

様々な年齢層の女性たちが、二人や三人、それぞれに組を作って、ワイワイと話に花を咲かせている。

クマーヌは、海外発祥の、わりかしマイナーなキャラクターだ。

グッズを取り扱っていない店も多いので、まさか街の百貨店でこのようなイベントがあるとは、夢にも思っていなかった。


「先生も……」

「……あ?」

「やっぱり、先生もお好きだったんですか!?」


嬉しさと感動でリミッターが外れたのか、極度な口下手という性格を一瞬ひそめ、真由美は自ら、神崎に質問していた。

この瞬間、真由美の中の予想は、確信に変わっていた。

やっぱり先生は、可愛いもの好きだったのだ……と。

パンケーキの店でも感じたことだが、そう仮定すると、全てに納得がいくように、真由美には思えた。

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