不器用ハートにドクターのメス
先生は実は、可愛いものが好きで。でも、一人では、今日行ったようなお店には行けなくて。
そんな時、偶然、メモ帳の件で、わたしもこういう系統が好きだと知った。
だから、わたしなんかを誘ってくれたのだ。
そうか、そうだよね、そういう理由でなければ、自分なんかが誘われるわけがないもの……と、真由美は一人で、勝手に納得を深めていく。
可愛いもの好き同士という親近感と喜びをもって、神崎を見上げる。
けれどすぐに、真由美は、あれ?と目をしばたかせた。
視線の先で、神崎は、大変苦々しい顔をしていたからだ。
あきらかに喜んではおらず、さもすれば、今にもこの場から引き返したそうな表情だった。
「先生……?」
「べつに」
二人の声が、同時に被った。
神崎は目を細め、息を吐きながら、言葉を続ける。
「べつに、好きじゃない。つーか、大の男がこういう系統好きだったらおかしいだろ」
「え……じゃあ……」
「調べたんだよ。お前が……」
どうしてこんな催しを知っているんですか、と真由美が尋ねる前に、低い声が落ちてきた。
神崎の顔に浮かんでいる渋い色が、その濃さを増していく。
けれど、渋い色だけではなく、そこにはほんのりと、照れの赤も混じっていた。
「……お前が、好きだっつってたから」
吐き捨てるように言うと、神崎は、ばつが悪そうに顔をそむける。
その様子と言われた言葉に、真由美はごくりと、息をのんだ。