不器用ハートにドクターのメス
相手の表情だけで想いを汲み取ったり、自分の好むことでなくても、相手の趣味に付き合えたり、するものなんだなぁ。
クマーヌから視線を外し、神崎の顔をそろりと盗み見しながら、真由美は考える。
……先生の趣味って、何なんだろう。
もし自分にも、できるようなものだったら。今度はわたしが、先生の趣味に付き合えたら……
そんな思いも付随して芽生えて、なんておこがましいんだと、真由美はその感情を、慌てて打ち消した。
十何体の展示。真由美にとっては夢のような時間が続いていたが、その時間もやがて、終わりを告げる。
いつの間にか、神崎と真由美は、最後の展示にたどり着いていた。
「あ……」
その展示を前にして、真由美は無意識に、声を漏らしていた。
ケースに入れられていたのは、とてもシンプルな、座らせて置けるタイプのクマーヌのぬいぐるみだった。
説明書きによると最も初期から発売されているものらしく、そしてそれは、真由美が父親から初めてプレゼントされた、一匹目のクマーヌと、同じものだった。
「どうかしたか」
先ほどまでとは違う真由美の様子に気づいた神崎は、顎を引き、目線を斜め下に落として問いかけた。
「これ……同じものが、家にあるんです」
吸い寄せられるようにクマーヌの人形を見つめながら、真由美はぽつりと呟く。
「ずっと幼い頃に、父が買ってくれて……それからずっと、好きで」
展示会場に入ってから、真由美はつたないながらも、繰り返し神崎と会話を交わしていた。
そのおかげか、言葉はすんなりと喉を通り、表に出てきた。