不器用ハートにドクターのメス
「可愛いものって、その……わたしには全然、似合わないんですけど。でもクマーヌを側に置いているときは、なんとなく……勘違いだけど、でもほんの少しだけ、可愛い女の子になれるような、気がして……」
たしかクマーヌをプレゼントされたのは、3歳の誕生日だった、と、真由美はかつての記憶に思いを馳せる。
……誕生日ケーキのろうそくを吹き消したあと。お父さんが、背中に隠していたぬいぐるみを、バッとわたしの目の前に登場させて、渡してくれたんだっけ。
遠い過去のその日。幼い真由美は、クマーヌを大切に抱きしめて、一緒に眠った。
そして、毎度の誕生日のたびに、クマーヌの数は増えていき、部屋はどんどんピンク化し、可愛らしさを増していった。
自分の趣味を開放できる、唯一の空間。
そこから外に出れば自粛して、身につけたり、持ち歩いたりすることはしなかった。
持ち歩いても、カバンの奥底にしまったり、カバーをつけて隠したりしていた。
自分にとって大好きで大切なものを、似合わないと笑われてしまうことを、恐れていた。
家族以外の誰かに見せるなんて、考えたこともなかった。
けれど今、自分は憧れの存在である人とクマーヌの展示会に足を運び、展示について話すことができている。
それってすごい。本当にすごいことだと、真由美は一人、胸を熱くする。
「……似合うと思うけど。俺は」
回想と感慨に浸っている最中、上から降って来た落ち着いたトーンの声に、はっと顔を上げる。
視界に入った神崎の顔は、ふざけているでもなく真剣で、その瞳は、じっと真由美を見つめていた。