不器用ハートにドクターのメス

その言葉を、聞いた瞬間。


「……っ、」


真由美の目からは、ぼろっと、大粒の涙がこぼれていた。

この間、病院から車で送ってもらったときには我慢できたのに、今回はだめだった。我慢できなかった。

誰かに褒められた時、真由美はいつもなら、その言葉を素直に受け止めることができない。

自信の無さから、すぐにマイナス思考に走り、そんなことないと否定して、褒められた事実をなかったことにしてしまう。

けれど、今の神崎の言葉は、心のひだに深く染み入るようで、真由美は素直に受け止め、聞き入れることができていた。

お前は大丈夫だ。

そう認めてもらえたことで、あやふやだった足場が、少しながらその輪郭を現していくような気がした。


「ひ……っ、く……っ」


喉が鳴る。次々と喉元に熱いものが込み上げ、その熱は涙となって、目からこぼれ落ちていく。

他のお客さんもいる展示会で、しかも出口付近で泣くなんて、注目を浴びてしまう。

先生が悪い男みたいに思われてしまう。泣き止まないと、としゃくりあげながら、真由美は思う。

泣きやめ、泣きやめわたし。そう、言い聞かせるのに。


「……泣くな」


頭に降ってきた、大きな手のひら。

その手と声がとても優しくて、真由美はよけいに、涙を止めることができなかった。




< 124 / 260 >

この作品をシェア

pagetop