不器用ハートにドクターのメス

「いらっしゃいませ、堂本様ですね」


堂本と一緒に入店し、出てきた店員にさっそく案内されたのは、ずいぶん雰囲気のある個室だった。

照明は薄暗く、明かり障子で仕切られた個室は、十分にプライベート感を演出している。

席は掘り炬燵式で、大胆な木目を露わにした食卓には重量感があり、安値のチェーン店とは違うということを暗に伝えている。

……と、落ち着いた店の雰囲気は文句ないものだったが、その後に出てきた料理は、抜群の雰囲気の良さすらかすませる、高レベルなものだった。


「な、うまいだろ」


したり顔で食卓の向こうからそう言ってくる堂本に、癪だが、神崎は同意せざるを得なかった。

先ほどから運ばれてくる一品料理が、なにせうまいのだ。

揚げナスのあられ添えに右京鮭。各々絶妙な工夫がなされており、舌鼓を打ってしまう。

そこに竹の粋な器で飲む、よく冷えた日本酒が加わるのだから、白旗を上げるよりなかった。


「……うまいな。お前いっつもよく見つけてくるよな、こういう店」

「飲食の知り合いも多いからな」


神崎からの珍しいほめ言葉に、堂本は含みを持たせて笑う。

堂本の友好関係は幅広い。医療関係だけでなく、どこでどう繋がったのかという人物と知り合いだったりする。

先ほど入店したときも、こちらから名前を言わずとも奥の個室に通してもらったので、ここの店主とも親しいのかもしれない。

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