不器用ハートにドクターのメス
「――だろ?……おい、神崎?」
名前を呼ばれ、神崎ははっと我に返り、正面の堂本に顔を向ける。
「んあ?」
「いや。今度名古屋である学会、神崎は出るのか?って」
名古屋である学会。仕事関連の話を振られたことで、頭が正常モードに切り替わる。
堂本の言う学会とは、日本心臓血管外科会に入会している心臓外科医が参加できるものだ。
そういえば今年も、プログラムに掲載されていた招待講演に、いくつか興味を引かれた演目があったことを、神崎は思い出す。
日本全国から心臓外科医が集まる場だ。
講演を聞くだけでなく、個々の研究発表ブースでは多くの外科医たちとディスカッションも行えるため、これがまた面白い。
前回は、鋭い質問を繰り返す神崎に、発表者が顔を蒼白にして焦るという、かわいそうな展開も多かったのだが。
うまい酒と料理も手伝って、神崎と堂本の話は途切れることなく交わされた。
普段はどちらかと言えば寡黙な神崎だが、話題がオペ関連の話となると、とたんに雄弁になる。
しかも同じ専門分野であり、頭もキレる堂本と相手となると、話のしがいもあり、対等に意見を述べ合うことができるので、なおさらだ。
同年代に腕を競える相手がいるということはいいものだ、と神崎は思う。
箸は進み、話も進んだ。
話の内容は、最近行ったオペの話に、近年中に向かわされるであろう、海外技術伝達の話。
そして今後取り組みたい研究発表の話と、様々だった。
「……で?」