不器用ハートにドクターのメス
堂本がそう言ったのは、何本目かの冷酒が無くなったころだった。
残っていた最後の一滴を自分の竹器に垂らし、堂本は、神崎に上目を向ける。
神崎は機嫌よく「でって?」と聞き返したが、次に聞こえてきた言葉に、ぴたりと自身の動きを止めた。
「この間話してたお目当ての女とは、なにか進展あったのか?」
予期せぬ話題の方向転換に、頬の内側に含んでいた鴨肉の味を、一瞬忘れた。
この間、とは、二ヶ月前に飲んでいた際のことだ。
教授陣が結婚はしないのかとうるさいという話から発展し、なら偽装結婚でもするしかない、結婚に興味がなさそうな、ちょうど良い女はいないのかと、堂本に尋ねられたことがあった。
そのときたしかに、神崎は真由美のことを思い浮かべてしまったのだが……当時はまだ、福原真由美という人物をいろいろと勘違いしていた上、そういう女がいるなどと、堂本に話したつもりはない。
ただ、一瞬言葉を止め、視線を宙に投げた神崎の素振りから、心当たりの女がいるのだなと、堂本が勝手に予測しただけのことだ。
「お前、そんなのよく覚えてんな……」
「俺好きだからね、恋バナ」
「……あっそ」
冗談めいた堂本の返しに、神崎は口を歪めて吐き捨てる。
一方、堂本はこの話題を終わらせる気は全くないようで、酒の手を止め、両前腕を机の上にのせて聞いてくる。
「で?」
「……だからべつに――」
「同じ病院の看護師?」