不器用ハートにドクターのメス
白っぽい色をした、両手を広げても余るほどの幅の道が、目の前に真っ直ぐ続いている。
素肌に近い色だ。それが病院の廊下だと気づいたとき、真由美は自分が立っている場所より先に、一人の人間を見つける。
『神崎先生っ!!』
それがすぐに誰かわかった真由美は、大きな声でその人物の名を呼び、駆け出す。
白衣の翻りを止め、神崎が立ち止まる。
そうしてゆっくりと、こちらを振り返る。
『おはようございます……!!』
『……おはよう、福原』
神崎の低い声を記憶から丁寧に取り出しながら、真由美は意識を浮上させた。
……夢、か。
目を開き、自分の部屋の目覚まし時計を視界に入れて、真由美はすぐにそう認識した。
目覚まし時計はちょうど午前5時になるところで、そして側に置かれたカレンダーは、今日が週明けの月曜であることを示している。
起きる直前まで、夢を見ていた。病院で、神崎に挨拶することができた夢だ。
いい夢だったからか、ひどく目覚めが良かった。
こんな夢をみたのは、挨拶のことばかりを考えて眠りについたからかもしれない……と、真由美はゆっくり体を起こす。
明日は絶対に、逃げずに先生に挨拶しよう。
眠る前、真由美は心の中で、何度もそればかりを唱えていたのだ。
三日前の、金曜の夜。兄の廉次に相談したことで、真由美の中に、大きな心境の変化が起こっていた。