不器用ハートにドクターのメス

先生がわたしを見つけてくれていたから。

先生の方から歩み寄って来てくれていたから、わたしは先生と、話ができていたんだ。

逆にわたしの方から、と思うと、こんなにも難しいんだなぁ……目を細めながら、真由美は今日一日のことを振り返る。

わたしはとろくて、先生は何もかも素早いから。だから、わたしから先生を見つけることは、難しい。

そう気づいてしまうと、ここ数日避けていたことを、真由美は改めてもったいなく思った。

もしかしたら、失礼な態度ばかりだった自分に、先生はもう愛想を尽かしているかもしれない……そんなマイナス思考がふとよぎったが、だめだだめだと、真由美はかぶりを振った。


……また、明日。


前向きな気持ちを取り戻し、真由美は心に誓う。

また明日、頑張ろう。今日だけで終わりじゃない。明日もあるんだから、焦ることないよね。

残念な気持ちは消えなかったが、真由美は待機室でいつものメモをまとめ終えると、早めに更衣室へと向かった。

たどり着いた更衣室には、先客がいた。

いつも真由美が帰ろうとする時間帯は人がいないことが多いのだが、今日は室内から、賑やかな声が漏れていた。


「ね、由香。ドクターとの結婚って、どう思う?」


更衣室のドアノブを回し、ドアを開けたとき、テンション高めの声が真由美を迎えた。

更衣室で賑やかしくしていたのは、オペ看の先輩たちだった。

真由美の教育指導役である山下薫と、オペ看歴4年の三船由香だ。

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