不器用ハートにドクターのメス
二人とも、更衣室に入ってきた真由美を一瞥したものの、すぐに目線を逸らし、自分たちの会話に戻っていった。
「なにー、いきなりー」
「いや、わたしの友だちナースがさぁ。同じ病院のドクターと結婚するらしいんだよね。でもわたしだったら同業職は嫌だなぁとか思ってー」
指導する側とされる側である山下と真由美だが、相変わらず、二人の距離は全く縮まっていない。
山下によく思われていないことを知っている真由美は、見られていないが一応頭を下げ、肩身の狭い思いで、自分のロッカー前に立った。
「わたし全然アリだなー。ドクターゲットするナースとか、勝ち組じゃん」
「えー、色々裏事情とかわかっちゃうから嫌じゃない?家でも仕事の話になりそうだし」
故意に聞こうとしているわけじゃないのに、同じ空間にいるためにこれでは盗み聞き状態だ。
早く着替えてこの場を出ようと、真由美は手の動きを早める。
が、次の瞬間、その手はすぐに動きを止めてしまった。
「アリだよアリー。神崎先生とか、嫁にもらってくんないかなー。たしかまだ、独身だよね?」
三船の口から、突然、神崎の名前が出現したからだ。
「ええーっ!チャレンジャーなこと言うなぁ」
「えっそりゃ、神崎先生オペ中は怖いけどさぁ。連絡事項で話す時とか、普通だもん。優秀な心臓外科医で、超男前だよ?文句ないじゃん」
強制的に耳に入ってくる神崎の話題に、真由美は知らず知らず、顔を真っ赤に染めてしまっていた。