不器用ハートにドクターのメス
神崎の名前を聞くだけで、心臓が高速で動く。そんな魔法にでもかかっているかのように、胸のあたりが痛くなる。
そして同時に、神崎に好意を持っている人が他にもいるのだということを知ってしまい、焦るような複雑な思いが、真由美の中に生まれていた。
「えー、でも」
ところが次の瞬間、胸の痛みも顔の火照りもふっ飛ばすような言葉が、山下の口からもれた。
「前にウワサで聞いたんだけど、神崎先生、研修医の頃病棟看護師と付き合ってたらしいよ」
心臓が、一瞬止まった気がした。
呼吸の方は実際に止まってしまっており、喉からヒュッと変な音が鳴った。
けれど、「マジで!?」と大きく返した三船のおかげで、その音は二人には聞こえなかったようだ。
「マジマジ!!今はその人病院にいないけど、超美人だったらしいよ!!でも、付き合ってすぐフッちゃったって」
「えーっ!知らない!!そんなネタどこから仕入れてくんの?」
「神崎先生って目立つから、ウワサ色々聞くもん。女と全然続かなくて、オトすのが趣味みたいなものだって。あれじゃない?根っからの遊び人タイプ。一度寝たらポイなんだよきっと」
真由美にはとうてい処理できないレベルの言葉たちが、先輩二人の間でリズムよく交わされていく。
全て耳には入ってはいるものの、脳みそは全く追いつくことができていない。
「はー……世の中にはほんとにいるもんだねー。取っちゃ食いが許されちゃう男」
「外科医の女遊び率は高いっていうしねー」