不器用ハートにドクターのメス

「えーショックー……わたしわりと本気でタイプなのに。ま、わたし程度じゃ遊び相手にもされないだろうけどねー」

「三船は可愛いよー!!そだ、今度合コン企画すんだけど、三船も来る?」

「えっなにそれ!行きたい行きたーい!!」


あははは、と笑い声が弾け、合コンの話題に上書きされる形で、神崎の話題はかき消えた。

真由美は震える指で洋服のボタンをはめ、なんとか着替え終えると、「お疲れ様です」と消え入りそうな声で言い残し、逃げるように更衣室を出た。

一人になり、はあっと息を吐き出すことはできたものの、頭は混乱に満ちていた。

ばくばくと心臓が波打って頭は沸騰しそうなのに、体の内側ではひやりと、冷たい何かが走り抜けるようだった。


……違う、よね?


どこを目指すでもなく早歩きをしながら、だれに向けてでもなく、真由美は問いかけた。

遊び人とか、オトすのが趣味だとか、一度寝たらポイとか……ウソだよね、そんなの。

だって先生は、そんなに薄情な人じゃない。自分といたとき、先生はいつだって優しかったもの。

大げさな優しさじゃなかった。わかりやすい優しさじゃなかった。

でも、にじみ出るぶっきらぼうな暖かさが、たしかにあったもの。

でも、もし。


痛いほど打ち鳴る心臓が……そして元々の自信の無さが、真由美のプラス思考をどんどん奪い、蝕んでいく。


もし……先輩たちが言っていたウワサが、本当だったら……?

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