不器用ハートにドクターのメス
わたしに声をかけてくれたのも、遊びの延長の一つにすぎなかったとしたら……?
自分に優しくしてくれたことが、もし、” オトすため ” の演技だったとしたら……。
自分のような人間を、神崎が気にかけてくれることを、真由美はずっと不可思議に思っていた。
魅力などない、それどころか人に避けられるような自分に接することは、神崎にとって一つもプラスにならないからだ。
けれどもし、遊ぼうと、からかおうという目的だったのなら……つじつまが合うような気がしてきてしまった。
そんな思いに襲われかけ、真由美はすぐに、違う、と否定した。
違う。一緒に過ごしていたときの先生の言動全てが、ウソだなんて思えない。
言葉も、表情も、全部がわたしを励ますための、とても優しいものだった。
それに、と真由美はつぐ。
もし先生がウワサ通りの人だったとしても、その遊びの標的を自分にする理由がないもの。
そういう的になるのは、すごく美人だったり、すごく知性があったり、きっとそういう女性だもの。
言い聞かせて、そのまま職員用玄関に足を向かわせようとした。
けれど気がつくと、真由美は6階に上がっていた。
神崎の、宿直室の前に来てしまっていた。
いったい真由美のどこに、こんな勇気があったのだろうか。
いや、勇気などない。真由美は内心震え上がっていて、実際に足は震えていた。
でも、真由美は嫌だったのだ。