不器用ハートにドクターのメス

……先生。わたし、先生の良い話を他の人の口から聞けて、今、とても嬉しいです。

その話に、わたしもそう思うって賛同できることも、すごく嬉しい。

それからね、先生。わたしちゃんと、言葉を出すことができました。

思っていることを言えました。

勇気を出して言ってみたら、相手に伝わりました。先生のおかげです。

先生。直接ありがとうございますって、言いたいです。

ありがとうって、伝えたい。


……先生に、会いたい。


ピリリリリ――その時、待機室の和やかな空気を、鋭い電子音が割った。

出どころは、山下が保有するピッチだった。

山下はすぐにポケットに手を突っ込み、けたたましい音を立てたピッチの通話ボタンを押すと、耳に当てる。


「はい!……はい、了解しました」


先ほどとは真逆の、緊迫した声で応答する山下。

ピッチを切ったあと、真由美に向かって振り返り、山下は苦笑いを浮かべてみせた。


「……あー。ウワサをすればなんとやら、だよ」


けれどその顔はすぐに、緊急めいたものに変わる。


「大動脈乖離の患者、今から来るよ。わたし外回りしながらフォローするから、器械出しついて」




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