不器用ハートにドクターのメス
けれど今後も、気は全く抜けない。ここからは時間の勝負になってくる。
時間をかければかけるほど、血液が固まらなくなってしまう上、患者の体力は奪われる。
何かしらの不都合や後遺症が残るリスクを、できるだけ回避せねばならない。
異常をきたした血管を切り取り、人工血管へ置換する。
人工血管はかなり太いため、かなりの回数針を差し込み、縫っていかなければならない。
おおよそ200針。神崎の手が、素早く動いていく。
早送りをしているような、魔法のような、手技。
その動きを見るうちに、真由美は思い出そうと意識せずとも、必要になる可能性がある器械や道具を、頭の中に次々と浮かべていた。
ただ手順を丸暗記するのではない。
これがどういうオペなのか、オペそのものを、真由美はもう理解していた。
自然と、染み着いていた。手順が入れ違っても、何かが追加されても、混乱することはなかった。
すると、心に余裕ができる。モニター、患者の状態にまで目が回る。
血圧。酸素。体温。危機管理。
これがこうだから、こうなる。こういう事態だから、執刀医はこう動く。
すべての、それぞれの事象が、一本の線につながっていく。理解できる。
――神崎が次の動作に映る瞬間、そこに、言葉はなかった。