不器用ハートにドクターのメス
器械名を、口頭指示されることはなかった。
神崎が真由美に手を差し出した瞬間と、真由美がクランプのための鉗子をその手にのせた瞬間は、零コンマ一秒、違わなかった。
まるで、パスが通るような瞬間だった。
区切った動作ではなく、一つの流れだった。
ぞくりとした。呼吸とは違う、肺に直接空気が送られたような衝撃が、真由美の中に走った。
考えて、じゃなかった。自然と、動いた。まるで――
『落ち込めるのは、逃げずに反省して、前に進もうとしてるってことだろ』
胸に熱いものがこみ上げ、真由美はマスクの下で、ぐっとくちびるを噛みしめる。
『……お前は、大丈夫だよ』
いつかの神崎の言葉が、脳裏で響いた気がした。