不器用ハートにドクターのメス
なんだろう。すごく、気持ちが高揚している。
体全部、指先まで、つま先まで、高揚感に満ちている。
ドキドキしている。すごく心地がいい。自分は今さっき、とても大切な瞬間を味わった気がする。
とても、大切な――
真由美は瞼を下ろし、オペの最中のことを、思い返す。
頭の中に、オペ中の映像が、怒濤のごとく押し寄せる。
切開。ポンプオンの瞬間。素早い縫合。
自分の手から、先生の手に流れるように器械が渡った――あの瞬間。
「……っ、」
その一瞬を思い出したとき、ドキドキに、鳥肌がたつような感動が混じった。
ああ、と思う。
誰かに背中を押されたように、新鮮な白さをおびた廊下を、歩き出す。
さっきまで脚が震えていたせいで、足取りは若干おぼつかなかったが、それでもしっかりと、地に足が着いているという感覚が、真由美にはあった。
歩く、歩く、歩く。
もうこのまま、走り出したくなる。泣きそうになる。
ああ、そっか、わたし。
……わたし、あの時初めて、やりがいを感じたんだ。
オペが終わっても自分の心にずっと残っていた高揚の正体に、真由美は気づいた。
今までずっと、自信がなかった。
この仕事を自分がしていいのか。自分なんかが、ここにいていいのか。
でもあの瞬間、自分の仕事は“ これ ”なんだと、強く自覚することができた。
患者さんの命を救うために、必死で頭を働かせて、体に染みつかせて、できるだけ速やかに動き、執刀医をサポートする。