不器用ハートにドクターのメス
お尻がひやりと冷たかったが、体温は緊張で、上昇していた。
手をほんの少し伸ばせば、触れられる。
こんなに近い距離に来るのは久しぶりだと、真由美は心臓を収縮させる。
吹き付ける外の風は、真由美に幾度も、まばたきをうながしてくる。
一度、ぎゅっと目をつむる。
先ほどまでは、先生に会いたい、話したいという衝動に駆られていたのにも関わらず、いざ本人を目の前にすると、緊張の塊に、簡単に喉を塞がれてしまう。
また、宿直室の時のように、冷たい言葉で追い返されてしまわないだろうか。
そんな不安も、大きくなってきてしまう。
「……夜勤、初めてだったんだろ」
「……っ、」
どう切り出そう。何から切り出そう。
さっそく混乱に陥りかけていた真由美の耳に、温度を保った神崎の声が届いた。
先生の方から声をかけてくれたと、真由美はホッとして、少し泣きそうになる。
神崎が、普通に話してくれるということだけで、真由美は嬉しくて仕方がなかった。
気が付くと湧いてくる弱い気持ちを、自らの意志で吹き飛ばす。
先生がどんな人であろうと構わない。もし、遊ばれていただけだったとしても、いい。
想いが通じ合うことなんてこれから一生ないだろうけれど、それでも。
何回も目元に訪れる涙の波を、意志の堤防でなんとかこらえて、真由美は答える。
「はい……すごく、びっくりしました」
「……ふ。引き強いな、お前」
「それ、先輩にも言われました。さっき……」