不器用ハートにドクターのメス
「先生が、一緒に出かけたときにかけてくれた言葉を思い出して……それで、勇気を出して、本音を言ってみたんです。そしたら……先輩、笑ってくれました。もっとしゃべってよって、言ってくれました」
長文を口にすると、頑張って抑え込もうとしていた感情が、込み上げてきてしまう。
必死で淡々とした風を装っていたのに、熱いものが、喉にも目にも、押し寄せる。
「だから……ありがとう、ございます……っ」
上ずった声で、なんとかそう言い切った。
神崎はしばらく黙ったあと、白衣のポケットから携帯灰皿を取り出しながら、言った。
「……わざわざ、んな礼だけ言いに来てくれたのか」
その声はぶっきらぼうで、けれどどことなく温かで、優しい響きがあった。
「ほんと、真面目だな。お前」
取り出した携帯灰皿の上で、神崎がタバコをもみ消す。
タバコの煙がなくなり、どこに視線の先を置いていいかわからなくなった真由美は、少し目を泳がせながら、再度口を開いた。
「それだけじゃ……ないです。先生に言いたいこと……まだ、あって」
真由美の発言に、神崎はふっと顔を上げる。
やっと自分のつま先を見ることに落ち着いて、真由美はうつむいたまま、口を開く。
「今日……今さっき、オペにつかせてもらっているとき。わたし……初めて、やりがいみたいなものを、感じました」
生まれたばかりの想いを声にしたら、肩先が小さく震えた。