不器用ハートにドクターのメス
自分のつま先より少し前方に視線をずらして、廊下と同じだ、と真由美は思った。
朝の柔らかい光に包まれて、階段も、廊下と同じように、色と雰囲気を変えていた。
もう少し首を上げて、空に視線を移す。
太陽が薄い雲でおおわれているため、直接見ても、目を傷める感じはしなかった。
とてもきれいだな、と真由美は思う。
岩に水が染み入るように、素直に、しっくりと、そう思う。
朝日がきれいた。朝日がまとう衣のようにたなびく雲がきれいだ。薄い青がきれいだ。
二人で見る、初めての朝日は。先生と並んで見上げる空は、すごく、きれいだ。
……先生は、きれいだ。
神崎にそっと視線を流して、真由美は強く、そう思う。
こくりと喉を鳴らして、つばを飲み込む。
つばだけでなく、込み上げてくる熱い熱を抑えるために、飲み込む動作を何度も行う。
先生は、きれいだ。
器用で長い指も、くっきりとした鼻筋も、ゆるくカーブを描いておりるまつげも、全部。
……先生が、好きだ。
感情が頂点に達し、真由美は熱い息を吐く。
思いはぐるぐるとめぐり、全身を支配していく。わたしは。
わたしは……このひとが、すごくすごく、好きだ。
「……先生」
やっと絞り出した声は、決意を秘めていて、けれどひどく、震えていた。
「神崎先生」
泣きそうで、ともすればもう半泣きになりながら、真由美は言った。
神崎が、驚きをもって真由美を見る。
神崎の力の強い瞳の中に、真由美が映り込んでいる。