不器用ハートにドクターのメス
真由美が答えると、神崎の眉根が、ぐっと寄った。
「……オニイチャン?」
怒った際と似た表情になりながら、神崎はカタコトのように繰り返す。
「は、はい。えっと……二週間前の金曜、ですよね?その日の夜なら、お兄ちゃんと、焼き鳥を食べに、街に行ってました」
「……は?」
「あ、だから焼き鳥を……」
「いや、そこじゃなくて」
神崎は視線を落とし、喉元を触ってつぶやいた。
「……兄ちゃんって、ウソだろ」
「う、ウソじゃないです……」
「~だって全く似てなかったぞ!?」
再び顔を跳ね上げ、声の勢いを強めた神崎に、真由美は戸惑いながら口にする。
「あの……お兄ちゃん、お母さん方の顔なんです。だからお母さんにはちょっと似てて……あ、でもお母さんよりおばあちゃんにすごく似てるっていうか……」
アゴを引き、ちろ、と上目で、神崎の様子をうかがう。
空気が抜けるような嘆息をもらしたかと思うと、神崎はがっくりと肩を落として、うなだれた。
そのまま黙り込んでしまうものだから、真由美はどうしていいかわからずに、とりあえず会話をつなごうとする。
「あの……で、でも、なんで知ってるんですか?」
おそるおそるそう問いかけたとき、神崎は再び、深く息を吐いた。
わしゃわしゃと自分の頭をかき、苦さを顔いっぱいに広げて、答える。
「……偶然、見かけたんだよ。そんとき俺も街にいたんだ」
「そ……そうだったんですか……」