不器用ハートにドクターのメス
2人の間に、再び沈黙が横たわる。
今度は穏やかなものでなく、若干気まずい沈黙だ。
これからどうしたらいいんだろうと、真由美はくちびるを真っ直ぐに結ぶ。
自分の伝えたいことは、もう全部、言い尽くしてしまった。
べつに付き合って下さいと言ったわけじゃないから、コメントはとくにもらえないものなのだろうか。
それともわたしの話し方が下手くそだから、内容がちゃんと伝わっていないのだろうか。
そんな心配が積もってきたとき、神崎がぽそりと、言葉を落とした。
「さっきの」
「……えっ」
「さっきの、ほんとか」
項垂れた状態のまま、首だけを回して、神崎は真由美に視線を送る。
むくれたような、照れたような表情が、ちらりとのぞいている。
「ほ……ほんとです。似てないけど、本当のお兄ちゃんで――」
「ちがう。そうじゃなくて」
真由美の答えを素早く制して、目元をゆがめながら、神崎は言った。
「……好きっつったろ」
「……っ!」
好きです。大好きです。
さきほど自分が発した人生初の告白を改めて提示されてしまい、真由美は一瞬で、頬を染めた。
「はい」というかすれた声とともに、小さくうなずく。
真っ赤になってうなずきながら、思う。本当だ。本当に、先生が好きだ。
非常階段までやって来たのは、山下さんと話せたことが、先生のおかげだと言いたかったから。
オペでやりがいを感じることが出来たと、言いたかったから。
けれど一番伝えたかったのは、好きだという言葉だった。