不器用ハートにドクターのメス

さて、とうとうこのときが来たと、真由美はぐっと身構える。

今からわたしは、先生にフラれてしまうのだろう。その心の準備を、簡易ながら行う。

自分に言い聞かせる。

ちゃんと、泣かずに受け止めよう。フラれてから、ありがとうと言おう。

これからも仕事を一緒に頑張らせてくださいって、そう言おう。

それが自分なりの、一番の初恋の葬り方だと……そう思って、強く目をつむる。


「……俺も」


ところが予想していなかった語が降ってきて、真由美ははっと、目を開けた。


「俺もだ」

「え……?」


実るわけがない。真由美の頭の中ではそう断定されているため、神崎が発した“ も ”の接続先が、わからなかった。

ぽかんとしてしまった真由美を前に、神崎は苦々しくくちびるを噛み、そして唸るように声を出した。


「……~だから!!俺もお前が好きだっつってんだよ!!」


え、という形に口は動いたが、声にはならなかった。

どんなにつらい言葉であろうが、受け止める準備はできていた。

泣かない心づもりはできていた。

けれど真逆の、信じられない奇跡のような言葉に、真由美の涙腺は、簡単に負けてしまった。


「……っ……」

「な……なんで泣くんだよ!?」


そう尋ねられても、頭も心も真っ白になって、真由美はわからなかった。

信じられない。わからない。今、先生は、なんて言ったの。

ぼたぼたと涙を落としながら、真由美は途切れ途切れに、言葉を発する。

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